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2017-05

死にゆく男 - 2009.05.31 Sun

初めて原書で7巻32章を読んだ時、ヴォルデモートが去り、入れ替わりに部屋に入ってスネイプ先生に近づいていくハリーに、私は「助けて」「助けて」と心の中で叫び続けました。
そして、その時は、ハリーは助けてくれようとしたのだと思いこみました。が、実際はそうでなく、英語力が足りない私の誤解だった、と知った時の驚きといったらありませんでした。
だってとても信じられません。首からの出血を止めようとしていた指が、スネイプ先生自身のものだったなんて……

結局、この場面では3人の生きた人間がそばで見ていたにもかかわらず、誰もスネイプ先生を助けようとはしなかったのですね。
初めから、「死にゆく男(dying man)」と見ているので、絶望的なことは明らかだったのでしょうけれど。

首から血を噴き出して倒れ、指で出血を止めようとしている人が目の前にいて、何の努力もしなかったのは、その惨劇に呆然としてしまったからだと好意的に解釈することにしています。
決して憎しみが勝って見殺しにしたわけではないと。
でなければ、あまりにスネイプ先生がかわいそうなので。
3人は、既に校内でかなりの惨劇を目撃していたでしょうけれど、これほどの大量出血を見たことはなかったのだと思います。
gush(血が噴き出す)とあるので、おそらく動脈を傷つけられたのでしょう。大量の動脈血の鮮明な赤い色と血の匂いは、人の感覚を狂わせるものがあるだろうと想像します。十代の少年少女なら尚更です。

でも、せめて、どこか触れて欲しかった。声をかけてあげて欲しかった。だって、ピーターの銀の手が、その喉元を締め付けた時は、ハリーは何も考えずにその手を引き戻そうとし、ロンもハリーと共に金属の指を引っ張ろうとしたし、呪文を唱えたでしょう?死にかけた人を前に敵も味方もなかったでしょう?
遺体は怖くて触りたくなくても、生きているうちなら触れられるでしょう?
どんなに憎い敵でも、目の前に苦しんでいる死にかけた人がいたら、恐る恐る手を差し伸べてしまったりしないでしょうか?
しかも、そこに倒れているのは、曲りなりにも、かつて3人を教え導いた先生なのですよ?真実を知らなくても、ハリーを何度も助けたことは忘れてしまったわけではないでしょう?

百歩譲って、触れるのが怖くても、声をかけることはできますよね?
同じように、大量の出血の末死んだドビーは、最期にハリーから「死なないで―」という言葉をかけてもらっています。
スネイプ先生を激しく憎むハリーにその言葉は言えなくても、ハーマイオニーなら言えたのではないでしょうか。
ここも、この場の張りつめた雰囲気に圧倒されて声も出なかったと好意的に解釈することにします。そうでなければ、私は遣りきれません。

スネイプ先生が一方的にハリーのローブをつかんで引きよせ、一方的に話しかけ、頼むことによって視線を向けてもらい、そして力尽きて、その手がドサリと物のように床に落ちるなんて、あまりにも寂しすぎる……
独りで死ぬのも寂しいけれど、人がいたのに何の働きかけもなかったことは、却って孤独感を募らせます。
確かに過去には罪を犯したかもしれませんが、その後の人生ずっと償い続けた上に多くの命を救ったというのに、その最期がこれではあまりに寂しく、作者という神を恨みたくなります。
一度罪を犯した者には、最期の温もりなどあり得ないということですか?
それとも、緑の瞳に見てもらえただけで十分だということでしょうか?

もう痛みは感じないかもしれないけれど、もう喜びも悲しみも感じないかもしれないけれど、せめて3人の誰かに、床に落ちる前の手を受け止めさせて欲しかったです。

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コメントを下さった方へ

はじめまして、コメントありがとうございます!
そして、いつも読んでくださって、ありがとうございます。

閉心術に関してのファンブックの解釈については私は知らない(または覚えていない)のですが、私は少し違う考えを持っています。(ファンブックの解釈も私の解釈も、『正解』というものは無いと考えています)
以前は同じように家庭環境の影響からの悲しいものを考えていましたが、今はもう少し前向きなものだと思っています。それについては、「閉心術2」http://legilimens.blog68.fc2.com/blog-entry-231.htmlという記事に書きましたので、良かったらご覧ください。

二重スパイは本当に辛い役目ですよね。
真実を知る人はこの世には誰もいなくて、どれほど孤独だっただろうと思います。
ダンブルドアに信じてもらえているという実感もなさそうだっし。 死ぬ時も傍で見ている人がいたのに、何もしてもらえなくて、かわいそうで仕方ありません。
もう少し救いのある最期であって欲しかったです。

コメントありがとうございました。
またどうぞいらしてくださいね。

7/22に拍手コメントくださった方へ

初めまして。
拍手とコメントありがとうございました。
原作を読んでいなくても、先生の最期をご存知だったのですね。
そう、確かに緑の目を見て死ぬことができましたが、実際はこんなに寂しい死に方だったんです。
何らかの働きかけがあっても良かったのに、と思うと、今でも激しく心が揺れてしまいます。
せめて、たくさんの読者の愛が伝われば良いのですが…


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