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2017-06

誰の視点 - 2007.01.24 Wed

先日いただいたコメントは、なかなか興味深いものでした。
スネイプ先生が、死の呪文を唱える前に見せた表情は、本当に憎しみの表情だったのか、というものでした。
原作では「その非情な顔の皺に、嫌悪と憎しみが刻まれていた」(6巻27章p.422)となっていますが、それを見たのは、ハリーではないか、ハリー視点なら、ハリーの気持ちが含まれているのではないか、というものでした。
ハリー視点なら、間違いなくその通りだと思います。ハリーには憎しみに思えたというだけで。
では、ハリー視点だったのかどうか、ということについて考えてみました。

改めて見直してみると、この場面に限らず、誰かの表情について語られることはしばしばありますが、今まで、ハリー視点なのかどうかについてはあまり意識していませんでした。言われてみれば、全てハリーの目を通した言葉になっているように見えます。
よく登場する「上唇が捲れ上がる」という言葉は、見たままの状態なので、ハリーが見ていようとあまり関係ないのですが、「意地悪なせせら笑いを浮かべている」となると、ハリーの主観が入ってきているように思います。
要は、「意地悪な」「嫌悪の」「憎しみの」「怒りの」などの感情を表す言葉で誰かの表情を語るとき、それは誰がその感情を汲み取っているか、ということだと思います。

ハリーのいる場面では、全てハリーの主観でしょうか。
「ハリーとロンはお互い気まずそうに目を見合わせた」(3巻14章p.356)というのは、ハリーの視点でも、ロンの視点でもないと思います。では、客観的な作者視点なのかというと、ここにはハグリッドが存在しているので、二人を見ているハグリッド視点とも考えられます。
ハリーのいない場面を探してみました。1巻の冒頭と、4巻1章、6巻1,2章は、ハリーがいない状態で第三者が描かれています。
ところが、その第三者の様子について書かれる時、例えば「スネイプは意に介するふうもなく、むしろおもしろがっているように見えた」(6巻2章p.39)は、そこにハリーはいないものの、ナルシッサとベラトリックスがるため、作者視点とは限りません。同様に「奥さんはビクッとして怒った顔をした」(1巻1章p.13)というのもダーズリー氏が見ています。
「おもしろがっている」「怒った」などは、その場にいる人が相手の表情から読み取った感情だということでしょうか。

それなら、誰もいない、全く一人の状態の時はどうでしょう。1巻のダーズリー氏や、4巻のマグルのフランク、6巻のマグルの首相など、ごくわずかの人物が、たった一人でいる場面がありますが、そこには、感情を示す言葉で修飾された表情はありませんでした!

こうなると、27章のアバダ・ケダブラ前の「嫌悪と憎しみ」の表情もハリーの見たものであり、憎しみであるかどうか、根底から覆される可能性はあるかと思いました。
が、今まで、スネイプ先生の表情についてハリーの目から見て書かれたものを、全て疑っていると、何がなんだかわからなくなると思います。
また、登場人物の主観抜きでは、表情は語れないのか、なんとか探してみたところ、こんな記述がありました。
「二人の背後でピシャリとドアを閉めながら、唇の薄いスネイプの口元に嘲るような笑いが浮かんだ」(6巻2章p.36)
これは、ナルシッサたちの背後での表情なので、スネイプ先生の表情を見ている第三者は存在せず、作者視点なのではないかと思われます。「嘲るような」と感じる登場人物のないままに書かれたこの表情の描き方は、他の場面とも変わらず、案外こんな作者視点の表情が混在していることを窺わせます。

そこで、「辛辣で不機嫌な表情に見えた」(4巻37章p.553)「あたかも(中略)キャンキャン吠えている犬と同じ苦しみを味わっているような顔だった」(6巻28章p.434)などのように「~に見えた」「~のような」という表現を純粋なハリーの主観入りと捉えつつ、27章の「嫌悪と憎しみ」など非常に重要な場面などは、その感情については色々な可能性について慎重に考えた方がいいかもしれないと思いました。

● COMMENT ●

作者視点の表情が混在

全て誰かの視点というわけでないく
語り部として作者視点もあるわけですね。と、なると作者は必ずしもスネイプ先生に好意的ではないかも(何かを隠すためかもしれませんが)しれないと思えてきてちょっと悲しいです。

それにしても、この短時間で宿題もやりつつ1巻から全てチェックされたのでしょうか、その情熱に頭が下がります。

はじめまして m(__)m

二尋さまのスネイプ考察、とても興味深く読ませていただいております。急に飛び入りしてすみません^^ スネイプ先生の黒白についてとなると、どうも黙っていられなくて…

色んな見方があると思いますが、私はダンブルドアに命ぜられたと固く信じる方です。もしそうだとするとダンブルは相当ひどい人ということになってしまいますが、彼は目的のためならかなり酷薄になれる人物という気がするので。

今日のトピックから少し話が逸れますが、「嫌悪と憎しみ」について、私はスネイプ先生がもし7巻で白と明かされるとすれば、ここが一番ともいえる伏線になっている部分だと思うのです。そもそも6巻終幕の展開を見ると、スネイプとハリーのつらい境遇が、かなり合致する形で描かれていますよね。もっともハリーはもちろん、私たちもまだスネイプが「つらい」かどうか分からずに読んでいるので、即座に「似ている」とは見えないわけですが、もしスネイプがダンブルドアの命令に従ってアバダを唱えさせられたとすると、2人の行動はハリーが洞窟探検を前にダンブルドアに「何があっても命令に従う」と約束させられた段階から、まるで平行するように同じ線をなぞっています。この、闘いに臨む前に交わされる(やや一方的な)絶対服従の約束しかり。そして洞窟の中でハリーは約束どおり校長の命令に従って毒入りの魔法薬を飲ませるわけですが、この時のハリーの心情を読むと、ダンブルドア殺害の直前のスネイプの表情と完全に同じ言葉で語られているのがわかります。日本語版ではどう訳されているか分からないのですが、UK版を見ると:

(p.534) Hating himself, repulsed by what he was doing, Harry forced the goblet back towards Dumbledore's mouth and tipped it, so that Dumbledore drank the remainder of the potion inside.

となっています。すぐ次の章で、スネイプがダンブルドアを殺す時に "hate" と "repulsed" が名詞形で(repulse は revolt とほぼ同義なので)繰り返され、

(p.556) Snape gazed a moment at Dumbledore, and there was revulsion and hatred etched in the harsh lines of his face.

と出てきます。

こうくると、やっぱりどうも、ハリーが味わった苦しみと同じ苦悶を(もっとひどく)感じているスネイプ先生…という風に見えてしまうのですが…。私の希望的観測でないことを祈ります。(涙)

話を戻し、表情や心情描写が誰の視点か、という問題、とても興味深いです。このシーンでは一貫してハリー視点だろうと思うのですが、「嫌悪」「憎しみ」と一口に言っても原因には色々あるので、何も知らないハリーが見たままを伝えてくれている紙面を通して、後から読み返せば「あぁ、本当はこういうわけだったのか」と違った感情が見えてくるという、1巻の暴れ箒のような展開になるといいなぁ、と願っています。あと、もしスネイプが本当に誠意の騎士団員で、それなのに「破れぬ誓い」を交わしてしまったとすると当然そのことを校長に報告したはずで、そうだとすると「勝ち誇るスネイプ」の章も果たして彼の表情は本当に「勝ち誇った」顔だったのか?と疑問が沸きます。自分の在学中から延々と毎年犠牲者を出してきたDADAの職が呪われていることぐらい闇の魔術に通じたスネイプなら気づくはずで、その職に今年こそ就くことになった彼の心境は「やったぁ♪」とはほど遠いと思われるのですが…。どちらかというと「来るなら来い」という感じだったのではと。きゃースネイプ先生かっこいい!

…ミーハーですみません^^;

(あわわ、なんだか物凄く長くなってしまいました(汗!))

DADA

zerlさん、はじめまして。
>自分の在学中から延々と毎年犠牲者を出してきたDADAの職が呪われていることぐらい闇の魔術に通じたスネイプなら気づくはずで、その職に今年こそ就くことになった彼の心境は「やったぁ♪」とはほど遠いと思われる

スネイプ先生は、どうして毎年、DADAの先生を希望していたのだろうと私は不思議に思っています。毎年DADAを希望するふりをし、ダンブルドアは受け入れない、という筋書きをダンブルドアとスネイプ先生の二人で演じていたのでしょうか・・・といったようなことを、二尋さんが8月26日の記事で考察されています(私もこの記事と似たような思いなのですが二尋さんのようにうまく書けないのでこんな書き方でごめんなさい)ここ、勝ち誇ったように見えるというのは、ハリー視点ですよね、やっぱり!
アンブリッジに「ダンブルドアが一貫してあなたの任命を拒否してきたのはなぜなのか、おわかりかしら?」と聞かれ、「それが何か意味があるとでも?」スネイプが暗い目を細めた。
何か意味があるように思えてなりません・・・すごく今、気になってきました・・・

作者視点

hajime*mamaさん
このコメントをいただくまで、あまり深く考えたことはありませんでした。なんとなく、これはハリーの言葉だな、と思う場面はあったのですが。
先日、私も作者がスネイプ先生に好意的ではない可能性に気付き、呆然としました。書くのは楽しいと言っていますから、愛していないわけではないのでしょうが、人物として好ましくないと考えているのは、言葉どおりなのかもしれないと思いました。それでも私の愛には変わりありません!
>1巻から全てチェック
チェックは不十分なんです。まだまだ、見つけていない参考になる文章があるかもしれません。また、英文のチェックもできいないので、穴だらけかも・・・

はじめまして!

zerlさん、初めまして!
飛び入り大歓迎!というか、どなたでも語りたい時に語って欲しいと思っています。どうぞお気軽に書いていってください。

6巻終幕の展開を、スネイプ先生とハリーのつらい境遇が、合致する形で描かれている、という部分、大変興味深く、わくわくしながら読ませていただきました。
このような形で検証しておらず、そんな合致があることに気付いていませんでしたから、かなり驚きました。そうでした。ハリーも憎みながら、薬を飲ませていましたね。
ハリーのように「何があっても命令を実行する」と、約束しなければならないどんな状況がスネイプ先生にあったのか、気になるところです。ハリーはホークラックスを破壊する手助けをしたい一心で、約束をしましたが。スネイプ先生が何を望んで、そんな約束をしたのか。あるいは、ペナルティーだったのか。何かありそうですね。

スネイプ先生の黒白については、実は私はそんなに重視していません。
もちろん、ダンブルドアの信頼を裏切らず、主人公を助けて、最終的には主人公や読者の誤解が解けることは嬉しいし、先生にも幸せになって欲しいと思っています。
でも、たとえスネイプ先生が主人公を助ける側にいなかったとしても、それでも私はそんな風に考えるに至ったスネイプ先生の心の闇ごと愛したいと思っています。
それに、何が黒で何が白なのか、よくわからなくなってきているということもあります。
zerlさんもおっしゃっているように、ダンブルドアは目的のためならかなり酷薄になれる人物ではないかと私も思っているので。

「憎しみ」や、「勝ち誇った」などは、やはり、後から読み返してこんな表情だったと思える展開になるのでは、と私も期待しています。そのまま、ということはないと思います。

コメントありがとうございました。また是非いらしてくださいね。

昔の記事

果穂さん
zerlさんへのメッセージだとは思いましたが、一言。

よく昔の記事を覚えていてくださいましたね!ありがとうございます。
私も自分で書いたのに、忘れてしまっていました(汗)
また違うことを言い出すかもしれません…

もう一つの視点

こんにちは。
皆さんの(特にzerlさんの)コメントを見て、もう一つの可能性に思い当たりました。

それは

「翻訳者視点」

英語を日本語に訳すとき、一つの単語でいくつも違った意味を持っていることが少なくありません。
たとえば、先生の髪の形容は、「ねっとりとした」とされていますが、同じ単語で「なめらかな」という意味もあるのを確認したことがあります。
松岡さんは、ローリングさんに確認しながら訳されているようですが、何もかもすべて、というわけではないと思います。
とすれば、もしかすると「作者視点」と思われているものが、実は「松岡視点」ということもあり得るのでは?

私自身は、あの「憎しみの表情」は、実は「苦悩(または苦悶)の表情」だと信じて疑いませんが。

確かに

そうですね、確かに翻訳者視点は混じると思います。私は以前の記事に書いたように、「半純血のプリンス」と訳したことで、「半分母の血」の意味を連想する機会が邦訳本読者には失われたと思っています。

ちなみに、私が邦訳が出る前に読んだ原書には、あの場面のrevulsion の文字には「反感、嫌悪」と hatredには「憎しみ、憎悪」と 書き込みがしてありました。私に関して言えば、この場面、邦訳とのズレはないということになります。

ありがとうございます

8月の記事、今頃ですが大変興味深く読ませて頂きました。本当に、どうしてスネイプは毎年DADAに応募し続けたのか…。ここはとても気になるところです。二尋さんの考察に逐一ふむ、ふむ、と頷いてしまいました。

(そして、私が言ったことと全く同じことを既におっしゃっていましたね! ちゃんと最近の過去ログくらいチェックしなけりゃ議論が堂々巡りになっちゃうじゃない、とちょっと反省中です…)

こちらこそ

毎年応募し続ける意味がよくわかりませんよね。着任以来、というのが特に。
過去ログはたくさんありすぎるし、どんどん意見も変わるので、チェックも適当でいいですよ。
私自身、8月の記事を読んで、「今ならこんなに断定的な文章にしない」と思いました(汗)


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